2003年10月1日水曜日

小説とは何か(1) 2003.10.X 初出

小説とは何か?

と、いきなり大きく出ましたが
僕は小説家を目指していながら
こういった基本的な問いを今まで
疎かにしていたのであります。
それで先日、折口信夫という国学者の、古代研究Ⅲ
国文学の発生(中公クラシックス)という本を読んで
いて、僕はハッと目を見開かされたのでありますが
折口信夫翁によりますと、小説とは
民間説話・伝説の記録である、との事です。
民間説話・伝説の記録が小説。
だから当然、そこには誇張や演出が入り込む
余地があるわけです。
小説は、民間説話・伝説の記録であるわけなので
その発生において既に、正確な事実の記録である事を
求められていないのだ、とも言えます。

どうしてそういった、民間説話・伝説の記録、を
小説、と呼ぶようになったのか、と言いますと
かつて史官の編纂した、史記、に絶対の権威があった
時代に、官、の編纂したものを、大、とし
民、の記録したものを、小、としていたところから
きているようなのであります。
即ち、官僚の編纂したものを、大説
民間の記録したものを、小説、としたようなのです。
そこには、官、を大とし、庶民・市井、を小とする
官尊民卑の思想が見られます。

官尊民卑の思想は、良くも悪くも
東アジアの伝統なのかもしれませんが
2003年現在の日本では、その東アジアの伝統
官尊民卑、が終わって、民尊官卑、の時代に
なろうとしています。
現代はやはり大変化の時代なのですね。

少々話が逸れましたが
小説、という言葉が、東アジア独特の
官を大とし、民を小とする、官尊民卑、の思想から
きていた、というのは、僕としては
非常に面白い発見でした。
でもそれはあくまで、国文学の発生、古代研究、の世界での話であります。



-小説とは何か(2)へ続く-
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