2003年10月1日水曜日

情熱の薔薇(4) 2003.10.X 初出

と、だいぶ話が逸れてしまいましたが
日本人は何故か、みんなと一緒、になりたがるので
戦争も経済戦争も、一度流れが決まると
修正が効かなくなってしまうのだ、という話なのであります。
そしてマイノリティー(少数派)は
常に、みんな、によって、非国民、として排除される。
常に、みんな、が中心で、個人、は、排除の対象となる。
で、完全に負けが見えるまで修正が利かない。
負けた責任も誰にあるのか分からない。
だって、みんなと一緒、にやった事なのだから。
そういった構図はやはり、不健康だな、という
話なのであります。

どうしてそうなるのか、と言うと、日本社会が
自立した市民一人一人が構成する社会、ではなく
顔の見えないみんな一緒の集団、になって
しまっているからなのだと僕は思います。
この国のマスコミは、この人が悪人だ、と決まると
まるで堰を切ったかのように一斉に一個人を
叩き始めますが、あれは覆面をして匿名性の影に隠れた
集団による、集団リンチ、私刑、村八分です。
僕はそういう映像を見ると
とても気味が悪くなります。
極論すれば、そういった姿勢が
バブルの狂乱を生み出したのです。

おかしいとは思うけど
みんながやってるからまあいいさ、と。
赤信号もみんなで渡れば怖くはないさ、と。
A社さんもB社さんもゴルフ場を作ったらしいから
じゃあ、うちも……なんてやっているうちに
バブルは止まらなくなってしまったと言われています。

まだバブルの熱が冷めやらぬ頃、
僕は定価17000円くらいのエア・ジョーダンという
バスケットシューズを、35000円くらいで
購入してしまった記憶があります。
ある意味僕も、バブルの子、だったわけですが
前回も少し触れましたように、僕は冗談抜きで
現在注目の田臥勇太選手のように
真剣にNBA入りを目指してバスケットボールに
打ち込んでいたので、大好きな、エア・ジョーダンが
投機の対象にされているのが嫌で仕方がありませんでした。
大人になってから分かったのは、投機の対象にしていたのは
実は発売元の当のナ○キ自身だったわけですが……
やはり80年代のバブル経済は狂乱だったわけですね。

一応記しておきますと、僕は、ネタ、ではなくて
当時は真剣にNBA入りを目指していて
田臥勇太選手の母校、名門能代工業とも対戦した事があります。
僕らの頃は、半田選手、がスターでした。
これは本当の話なのですよ、みなさん。
僕はバスケは相当上手い。

で、懸命なる読者諸氏はお気づきの通り
お気楽で、且つ、おめでたい僕は
当時、NBA選手になるんだ、と回りに
公言していましたので、あらゆる人に
日本に生まれた時点で無理だよ、と笑われていました。
あいつは、やはり、変わり者だな、と。
そんな夢みたいなこと言ってないで
受験勉強しなさい、と何度も怒られていました。

でも2003年現在、バスケに限らず
野球はもとより、サッカー、バレーと
あらゆるスポーツ選手が海外のプロリーグ入りを
目指して頑張っているので、当時の僕のように
テストの成績はブッチギリで学年最下位
全国偏差値は毎回25、でもバスケだけはやたら上手い
という紅顔の美少年が、NBA選手になるんだ、と公言しても
誰も笑わないはずです。

むしろ今時無理して、いい大学、なんて行っても
たいしていい事はないのだから
とりあえずお前は、バスケットボールを頑張れよ、と
言ってくれる人もいるはずです。
構造改革はやはり20年遅れているのです。

海外の事情を一切考えずに、日本の中だけで
みんなと一緒、に、盛り上がっていたのが
バブル経済の正体です。

そんな狂乱のバブル、1980年代にあって
ブルーハーツは、またまた歌っていたのです。

見てきた物や聞いた事
いままで覚えた全部
でたらめだったら面白い
そんな気持ち分かるでしょう

これはブルーハーツの、情熱の薔薇、という曲の一節
なのですが、僕は当時、非国民、だったので
そんな気持ち、が分かったのです。
なんだか最近の、卵のなかみ、は
ブルーハーツ特集と化している感が
ありますが、僕はやはりあのバブルの狂乱の時代に
あって、ブルーハーツは正しかったような気がします。

見てきた物や聞いた事
いままで覚えた全部
でたらめだったら面白い
そんな気持ち分かるでしょう

そういう視点を多くの日本人が、自立した個人、として
自立した市民、として持っていれば
日本人みんな、が一方向に傾いて
戦争や経済戦争を繰り広げ
完敗するまで誰も何も言えない、気がつかない
といった不健康な構図はなくなるのではないか、と
僕は思ってしまうわけです。

実際こうして、終戦と、第二の敗戦、と呼ばれる
現在の状況を比べてズラズラと書いてきてみると
僕が今まで見てきたものや聞いた事
覚えてきたもののほとんどは、でたらめ、だったようです。

じゃあ答えは、いったいどこからくるのだろう。

答えはきっと奥の方
心のずっと奥の方
涙はそこからやって来る

それが、情熱の薔薇、における、答え、でした。

情熱の真っ赤な薔薇を、胸に咲かせよう。




-情熱の薔薇(完)-