2003年6月1日日曜日

数字は嘘をつかないが嘘つきが数字をつくる 視聴率と実視聴率 2003.6.X 初出

先日友人に、TVがラジオ化してるよね、と
言われて僕はハッとしました。
TVがラジオになることはないので
それは正確にはTV番組というものが
ラジオ番組のようになんとなくつけて
おくものになってしまった、という
ことだと思います。

おそらくかつてはTVの登場で
それまでメディアの王様だったラジオが
なんとなくつけておくBGM的なものに
なってしまった、という変化があったのだと
思います。
同様に今回はインターネットの登場で
TVがなんとなくつけておくBGM的なものに
なりつつある、という変化が起こっているのかも
しれません。

事件の速報性という点でも
インターネットがTV・ラジオに追いついて
きていますし、それにインターネットで
TV番組もラジオ番組も流れるように
なりつつあります。

僕の周りでも、パソコンを持っている人は
一様に、TV観なくなったね、と言います。

食堂や人の集まるところに
何気にTVが置いてあって
そこにいる人たちを
観察してみても
みんな自分達の会話や
ケータイのメールチェックに
忙しくてTVを注意して観ている人は
ほとんどいないようです。

何か大きなイベントがあると
マスコミは、視聴率何パーセント! と
さも日本人のほとんどがこれを
観たんだ、とアピールしますが
僕は何かおかしいな、と最近感じていたのです。
力道山を観るために街頭のTVに人が
群がった60年代でもないのだし……と。
そこで僕はある格言を思い出したのです。

数字は嘘をつかないが
嘘つきが数字をつくる。

ただTVをつけているだけの人が
圧倒的に増えた時代に
視聴率30パーセント! とか
視聴率40パーセント! とか言われても
真に受ける気になれません。
実視聴率というものを考えると
そのうち半分以上はおそらく、テレビをつけながら
他の事をしていた、というもののように
思います。

それでもマスコミが視聴率を前面に押し出して
くるのは、みんなと一緒じゃなきゃいけない、とか
出る杭は打つ、というかつての日本社会に
順応していた人達が現在強い不安を抱えていて
そういう人達が視聴率の高い連ドラや
バラエティー番組の情報を求めているから
という構図があるからかもしれません。
でもTVのあおる力、アジる力は
どんどん弱まっているように感じます。
それでも出演者達は、自分達が王様だ、と
いう表情で、今時こうだよね、的発言をしています。
政治家達には、TVのアジテーション力を使って
ポピュリズム政治を行おう、という姿勢が
見え見えです。でも何かおかしい、と感じる
人が増えています。
若い人達からは、芸能人ってTVに出る回数が
多いだけで他は普通の人だよね、という声が
聞こえてきます。

サイバーレボリューションというエッセイにも
書きましたが、IT革命は情報の民主化を
引き起こしているので、次第に王様が裸であることが
明らかになっていくような気がします。
僕はとりあえず
小さい声で言ってみたいと思います。

王様は裸じゃないか。


数字は嘘をつかないが
嘘つきが数字をつくる  視聴率と実視聴率