2003年6月1日日曜日

宮城県近代美術館 その3 2003.6.X  初出

僕は眼を鍛えるために
宮城県近代美術館に通いつめて
いた時期があるので
実は常設展の美術品も
見慣れたものが多いのですが
いつ行ってみても新たな発見が
あります(ちなみに眼を鍛える、という
のは視力回復とかではないので
あしからず……僕は両眼1.5、凄い)

今回気になったのは
マックス・ヘビシュタインという人の
版画シリーズです。
それぞれの版画に
われらの父
天にいますわれらの父よ
御名があがめられますように
世々限りなくアーメン
というタイトルがふってあります。
キリスト教世界で生きる魂が
脱出口を求めてあがいている版画です。
どうしてその版画に引き付けられたのか、と
思い出してみると
たぶん僕が、キリスト教って何だろう、と
考えていたからだと思います。
不思議なものです。
美術品はそういったバイブレーションや
メッセージを発していて
出会うべく時に出会うと、ビンゴ!
という事になります。

どんなに名画と言われるものでも
その人が出会う時期によっては
何が名画か分からない、という事も
あります。
それでよいのだと僕は思います。
バブルの頃、世界中の美術品を
金にもの言わせて買い取って
ゴッホだか誰だかの絵を、死んだら
一緒に燃やしてくれ、と発言する人まで
飛び出し、世界中から
バッシングを受けたわが国でしたが
(戦利品を大英博物館に所蔵している
イギリスには言われたくない)
ゴッホだろうがミロだろうが
ピカソだろうが
シャガールだろうが
みんな名画というけど
今のところ僕にはよく分かりません、と
言えるようになったら本当の成熟社会
なのだと思います。

というわけで今回はおそろしく長い
エッセイになってしまいましたが
こんな素敵な近代美術館が身近に
あるという事で仙台万歳なわけです。

最後に特設展情報。
日本が誇る天才版画家。
わだばゴッホになる
棟方志功展
4月5日~6月15日
宮城県近代美術館


-宮城県近代美術館(完)-


陰翳礼讃 東京をおもう (中公クラシックス (J5))